導入詳細
経緯教職員の多様な働き方推進と機器管理からの脱却を目指し
学内電話基盤をクラウド型PBXにリプレース
東京の中心かつ文教の地である本郷で97年の歴史を有する東洋学園大学。「時代の変化に応える大学」を理念のひとつに掲げる同学では、コロナ禍前の2019 年から教職員のコミュニケーションツールにMicrosoft Teamsを採用するなど、学内のDXを積極的に進めている。

メディアセンター 課長
松本 由美氏
同学は他の大学に先駆けて、2007年にユニアデックスと共にシスコのIP-PBX(SIPサーバー)によるIP電話化を実施。メディアセンター 課長の松本由美氏は従来の課題を、次のように話す。「IP電話化によって内線の設定変更が容易になり、教職員一人ひとりにダイヤルイン番号を付与。ボイスメールや電話会議などの利用も浸透していましたが、固定電話での利用が前提のため、移動の多い教職員とのコミュニケーションで課題が生じていました。自席に加えて、スマートフォンやPCでも外線や内線が受けられるようにできれば、取り次ぎの手間が解消されてコミュニケーションがスムーズになると同時に、在宅勤務など育児や介護などの事情にも配慮した多様な働き方が実現できると考えました」
こうした要件を踏まえ、ユニアデックスが提案したのがシスコのWebex Callingだ。Webex Callingとは、クラウドで提供されるサブスクリプション型の電話サービス。スマートクラウド上にあるPBX機能を利用することで、従来オンプレミスで実装していた電話システムの機能をすべて利用することが可能。さらに固定電話、スマートフォンやPCなどでダイヤルイン番号が利用できる。

メディアセンター 部長
石崎 敏弘氏
メディアセンター 部長の石崎敏弘氏は「本学はいま、学内にあるさまざまなシステムのクラウド移行を積極的に進めており、PBXもクラウド化できれば、さらなる機器管理工数の削減が実現すると考え、採用に向けての検討を開始しました」と話す。
プロセス丁寧なPoCで懸念点を払拭
従来の機能や運用は極力変えず、スムーズにリプレース完了
同学とユニアデックスは、リプレースに向けたPoC(概念実証)を実施。電話機3台を使い、実用性を評価した。松本氏は当時を振り返り、「PoCでは電話の取り次ぎや代理応答などのユーザー側のオペレーションと、異動などを想定した管理者側の設定変更など、これまで利用してきたIP電話の利点が損なわれることがないか、細かく検証しました。ユニアデックスはその間、きめ細かな対応をいただき、リプレースしても問題ないとの手ごたえを得ることができ、安心しました。機器を設置することなく、こうした本番さながらの実証が行えるのも、クラウドならではの利点だと感じました」と語る。
最終的にWebex Callingを採用した決め手について、石崎氏はこう語る。「いくつかのサービスとの比較も行いましたが、Webex Callingは従来のシスコIP電話との親和性はもちろん、デバイスの対応OSの幅広さも決め手となりました。BYOD端末を利用することが多い教員は、PCおよびスマートフォンのOSや機種もさまざまです。そのため、対応OSの幅広さは選定の上で大きな要因となりました」
松本氏は、リプレースにあたっての最大の懸念を、キャリア変更に伴う番号ポータビリティーの実施と語る。「Webex CallingではKDDIの回線となり、従来の回線会社を変更する必要がありました。大学という機関の特性上、外線番号は容易に変更できません。そのため、番号ポータビリティーが確実に実施できるか、通話料金などの面も含め、慎重に検討しました。ユニアデックスはシスコと通信事業者との間にも入って打ち合わせを重ねて、一つひとつ不安点をクリアしてくれました」
リプレースは2022年12月、冬季事務閉鎖期間中に実施。万一に備えて従来の電話回線を数本残した状態でWebex Callingに移行し、問題ないことを確認した上で従来回線を解約。結果として、何事もなくリプレースが完了した。

効果・今後PBXのクラウド化で運用・管理性が向上
場所に縛られない多様な働き方を推進
同学では、リプレースに併せて本郷キャンパスの電話機全270台をCP-7821に刷新。教職員が所有するPCおよびスマートフォンにWebex Callingアプリを導入し、各自が自席とリモート環境のどちらからでも外線、内線電話を発着信できる構成とした。

メディアセンター 係長
栗原 和志氏
こうして2023年の幕開けとともに利用が開始されたWebex Calling。運用面での変化について、メディアセンター 係長の栗原和志氏は、次のように話す。「以前と比べ、設定作業は格段に楽になりました。クラウドコンソールのUIは、システム担当者でなくても使いこなせるレベルで、直感的でわかりやすいです。以前は教職員の異動などの際、デバイス、ユーザープロファイルなど設定項目も多く、作業が属人化していました。更改後は作業工数も減り、分業も可能となったことで、迅速に対応できるようになりました」
さらに、利用者にとっての利便性を栗原氏は「新たに導入したIP-PhoneのCP-7821は、従来機と使い勝手は大きく変わらず、教職員にもマニュアルを配布するのみで受け入れてもらえました。Webex Callingアプリは通話履歴や電話帳の検索がしやすいと、非常に好評です」と語る。
PBXのクラウド化による効果について、松本氏は「従来、半年以上かかっていた構築期間が、今回は約3カ月と、非常にスピーディーでした。そしてハードウエアという資産を所有するのではなく、サービス利用型に変えることができたことは、とても大きな変化です。以前は法定停電のたびに神経を尖らせていましたが、クラウド化によってその心配もなくなります。災害時も物理的な被害を受けるリスクがなくなり、BCP対策としても効果的です」と話す。
松本氏はユニアデックスの対応力について、次のように評価する。「ユニアデックスとは長いお付き合いになりますが、歴代のSEや営業ご担当者と同様、本件でもこちらの要望に丁寧に対応してくれました。導入予定のシスコ製品も事前に自社のラボで検証してあり、技術面でもまったく心配せず、お任せできました。チケット制での対応が当たり前の時代、ユニアデックスは常に柔軟に対応してくれるので、安心してお付き合いできます」
さまざまな環境変化の中、大学の教職員の先進的な働き方を見据えて取り組んだ本プロジェクト。最後に今後の展望とユニアデックスへの期待を、石崎氏は次のように結んだ。「Webex Callingによるスマートフォンの業務活用は、少しずつ浸透しつつあります。今後はMicrosoft Teamsとの連携など、教職員同士がいつでもどこでもコミュニケーションできる多様な働き方の実現を目指し、引き続き変革を進めたいと考えます。ユニアデックスにはこれからも、先進テクノロジーを活用したソリューション提案はもちろん、他の大学などでの活用事例などの有益な情報提供にも、期待しています」
2023年07月取材