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AI時代のデータセンター新基準、なぜ今「水冷」が必要なのか

AIブームに伴うサーバーの高密度化により、データセンターでは従来の「空冷方式」の限界に直面しています。最新チップの莫大な熱を効率よく制御し、運用コスト抑制とサステナビリティーを両立させる冷却技術として注目されているのが「水冷方式」です。本記事では空冷方式の課題から水冷方式の仕組み、圧倒的なメリット、導入時の注意点などについて解説します。

古くて新しいデータセンターの水冷方式

次世代データセンターのスタンダードとして注目される水冷方式ですが、実は新しい技術ではありません。
その歴史は1960年代にまで遡ります。商用メインフレーム(汎用機)が普及したこの時代、真空管や初期の半導体が高熱を発したため、空冷方式では冷却が追い付かなくなりました。そのため筐体内部に冷水の配管を通し、熱を直接奪う水冷方式が主流になりました。
1980年代に入ると、スーパーコンピューターの台頭により冷却技術はさらに進化します。当時のスーパーコンピューターは、処理速度を極限まで追求するために猛烈に発熱する素子を採用しており、空冷方式での運用は物理的に不可能でした。各社が独自の冷却技術を競い合う中で、基板を絶縁性液体に丸ごと浸す、液浸冷却が誕生したのもこの頃です。
しかし、1990年代にかけて半導体技術(CMOSなど)の進化により省電力化が進むと、冷却方式の主役は再び空冷方式へと移り変わります。特別な設備を必要としない空冷方式の普及により、水冷方式は一時、表舞台から姿を消すこととなりました。


データセンターに訪れた、空冷方式の限界

そして現在では、データセンターにおける冷却技術が大きな転換点を迎えています。長年主流だった空冷方式がなぜ限界を迎えているのか、その背景を3つの視点から解説します。

AIブームによるサーバーの高密度化

AIブームにより、サーバーに高い処理能力が求められるようになりました。そのため、サーバーラックはより多くの高性能サーバーを効率的に配置する高密度化が進んでいます。 かつては1ラック当たり数キロワット程度だった消費電力は、今や数十キロワット、時には100キロワットを超えるケースも珍しくありません。

物理的な冷却能力の限界

IT機器で消費される電力は、ほぼ全て熱に変換されます。従来の空冷方式では、大型ファンで冷気を送り込み、ヒートシンクを介して熱を逃がす仕組みを採用しています。空気は液体に比べて熱伝導率や熱輸送能力が極めて低いため、最新のCPU・GPUが発する莫大な熱を排出しきれなくなっています。もし十分に冷却ができなければ、せっかくの性能が生かされないばかりか、故障にもつながる恐れがあるのです。

社会的責任と経済的コスト

急増する電力消費は、運用コストを押し上げるだけではなく、地球温暖化対策としてのサステナビリティー(持続可能性)の観点からも無視できない課題です。世界的に二酸化炭素(CO2)排出量削減の要請が強まる中、電力の多くを冷却という付帯設備に費やす従来のモデルは、経済的にも環境的にも限界に達しています。すなわち、従来の空冷方式より効率的な冷却方式が求められているのです。


水冷方式とは? 空冷方式との違い

このような背景がある中、水冷方式が再び注目されています。ここでは水冷方式がどのような仕組みなのか、空冷方式と比較して解説します。
水冷方式に対応するデータセンターとは、厳密には冷却液(冷媒となる液体)を冷やすための水を供給できる設備を持ったデータセンターを指します。冷却液にはプロピレングリコール25%(PG25)などの循環冷却剤や、特殊な用途に合わせて冷却効率や環境への影響を最適化した冷却液があります。

空冷方式との決定的な違いとは

従来の空冷方式の仕組みは、サーバー内のファンで空気を取り込み、熱を外部に排出する仕組みです。データセンター全体の空調で冷気を供給し、熱気を回収します。
それに対して水冷方式は、CPU、GPUなどのサーバー内にあるチップ(発熱体)の上に設置されたコールドプレート(金属板)を冷却液が通過することで熱を取り除き、熱交換器にて冷却されることで繰り返しサーバー内を循環します。
水冷方式の最大の強みは、冷却液の物理的特性にあります。液体は空気よりも熱伝導率、熱輸送能力がはるかに高く、少量の液体でより効率よく熱を取り除くことができます。

「空冷方式」概念図

水冷方式の構成要素とは

水冷方式に対応したデータセンターのシステムは、以下の3つのレイヤーで構成されています。

冷却設備

建物屋外などに設置されるチラーや冷却塔。最終的に熱を大気中へ放出します。

CDU(Coolant Distribution Unit:冷却分配装置)

システムの心臓部です。施設側からの冷水と、サーバーを循環する冷却液の間で熱交換を行い、流量や温度を緻密に制御します。

水冷対応サーバー・サーバーラック

サーバー内部のCPUなどにコールドプレートを密着させ、熱を直接冷却液へと取り込みます。

「水冷方式」概念図


数値で見る水冷方式のメリット

空冷方式と比較した水冷方式のメリットを4つの視点から数値で比較してみましょう。

CPU・GPUの発熱量

現行のCPUは1ソケットあたり250~350ワット、GPUは1枚で700ワット程度ですが、次世代ではCPUで600ワット以上、GPUで1.2キロワットに達すると予測されています。IT機器の消費電力はほぼすべてが熱に変わるため、発熱量もこれに比例して増大します。最新のハイエンドサーバーにいたっては、 わずか1時間で家庭用の浴槽1杯分を沸かせるほどの莫大な熱を放出します。

冷却媒体の輸送効率

熱を運ぶ能力を比較すると、水冷の効率の良さが際立ちます。ハイエンドサーバー1台を冷却する場合、空気の場合は約3,000立方メートルもの膨大な体積が必要ですが、水冷の場合はわずか0.86立方メートルで済みます。この輸送効率の差により、巨大なファンを高速回転させ続ける必要がなくなり、空調にかかる運用コストを劇的に抑えることが可能です。

サーバーの高密度化

空冷方式では物理的な制約から、1ラック当たり20キロワット程度の電力が限界と言われてきました。しかし効率的な熱回収が可能な水冷なら、最大200キロワットの超高密度な構築が現実のものとなります。

省エネ

空冷方式では、サーバー内の小さなファンや室内の巨大な空調ファンを高速回転させて熱を逃がしており、ファンの消費電力は回転数の3乗に比例 して増えます。
水冷方式では、ポンプで少量の水を循環させるだけで、ファンより遥かに多くの熱を運べます。一般的な空冷方式のデータセンターではPUE(電力使用効率)が平均1.6(IT機器に1使用するのに冷却に0.6使用)でしたが、最新の水冷方式対応のデータセンターではPUEが平均1.2 となり、極限まで無駄を削ぎ落とした運用が可能になります。


水冷方式の3つのフェーズとは

水冷サーバーの冷却方式は、主に3つの段階(フェーズ/世代)に分類されています。2026年現在、水冷方式に対応しているデータセンターは第二世代が主流で、第三世代に対応したデータセンターは現段階ではほとんど存在しません。本記事においても、水冷方式=第二世代を前提として解説しています。
それでは、水冷方式の世代をご紹介しましょう。

第一世代:液冷から空冷への熱交換(L to A:Liquid to Air)

サーバーから排出される温まった冷却液をラック内のCDUを介して空気で熱を処理する方法です。冷却効率は第二世代ほど高くありませんが、ラック内で冷却が完結するため導入しやすいという特徴があります。

第二世代:直接液冷方式(L to L:Liquid to Liquid)

一般に水冷方式は、この方法を指します。屋外に冷却設備を設置し、データセンター内のCDUを介して冷却液を水冷ラックに引き込む仕組みです。冷却液がコールドプレートを介してサーバー内部のコンポーネントを直接冷却します。初期コストが高い傾向にありますが、長期的には高い省エネルギーの効果が得られます。

第三世代:液浸冷却方式(Immersion)

機器を冷媒(オイル)に浸し、冷媒を冷却・循環させることで機器が発する熱を処理する方法です。冷却効率が最も高い方法ですが、冷却設備に加えて、液浸対応サーバー、液浸対応熱交換器、液浸タンク、冷却用オイル(絶縁性のある液体)、クレーンが必要となるため、導入には高いハードルがあります。


水冷方式対応のデータセンターを利用する際の注意点

水冷方式対応のデータセンターは次世代AIインフラの最適解ですが、利用者の視点で見ると、従来の空冷方式とは異なる導入のハードルがいくつか存在します。検討時に注意すべき5つのポイントを解説します。

データセンターの冷却方式に対応したサーバーが必要になる

サーバー機器は、データセンター側が提供する冷却方式(直接液冷や液浸など)に対応した専用モデルの選定が必要です。2026年時点で主要ベンダーからの製品投入は加速していますが、機器に設備が対応しているか、事前の厳密な確認が不可欠です。

特殊な給電仕様(3系統給電)に対応するデータセンターが少ない

ハイエンドサーバーでは、電力の安定供給のために回路を3つに分ける、3系統給電が求められるケースがあります。2026年現在、日本国内でこの特殊な受電環境に対応できるデータセンターは非常に少なく、設置場所の選択肢が限られるのが実情です。

従来のITエンジニアのスキルでは対応できない業務がある

水冷方式対応のデータセンターでは、従来のITエンジニアのスキルでは対応が難しい業務が含まれます。例えば厳格な水質管理や、万一の漏水対策、さらにメーカーが義務付けている専門研修の受講など、従来の「サーバーを構築する」IT領域の作業以外に設備領域の業務が発生します。

以前から存在するデータセンターは、ほぼ水冷方式に対応していない

2026年現在で、国内の既存データセンターの多くは空冷方式が前提で設計されており、床荷重や配管の問題から水冷方式に対応できないケースがほとんどです。一部の例外を除き、水冷方式を利用するには新たに建設された水冷対応済みデータセンターを探す必要があります。

初期コストとROI(投資対効果)の検討

水冷方式は空冷方式に比べ、設備そのものの初期コストが高額になります。PUEの改善による長期的な電気代削減というメリットによって、この初期投資をいつ回収できるのか、シビアなシミュレーションと投資判断が求められます。


まとめ:水冷方式対応のデータセンターは、AI時代に必須のインフラ

最後に各章を振り返ります。

  • 水冷方式は1980年代にはすでに存在した技術だが、半導体技術(CMOSなど)の進化により省電力化が進み、特別な設備を必要としない空冷方式が主流となっていた。
  • 現在、データセンターにおける冷却技術は、「サーバーの高密度化」「物理的な冷却能力の限界」「社会的責任と経済的コスト」の影響により転換期を迎えている。
  • 従来の空冷方式は、サーバー内のファンで空気を取り込み、熱を外部に排出する。それに対して水冷方式は、サーバー内部を冷却液が通過することで熱を取り除く。
  • 冷却に必要な媒体の体積や、高密度化、PUEの面において、空冷方式と比較して水冷方式に圧倒的なメリットがある。
  • 水冷サーバーの冷却方式は、主に3つの世代に分類されており、水冷サーバーのデータセンターは第二世代である直接液冷方式が主流となっている。
  • 利用にあたっては、サーバーが水冷対応データセンターに対応しているか、従来のサーバー構築にはない設備管理業務に対応できるか、などの注意点がある。

水冷方式はオプションではなく、運用コストの抑制と、サステナビリティー(持続可能性)を実現するAI時代に必須の冷却技術です。ユニアデックスでは、水冷方式に対応するデータセンターについて汎用機時代の水冷方式での保守・運用の実績にもとづく豊富なノウハウを蓄積しています。従来のITエンジニアでは対応できない設備管理業務についても対応可能です。ご興味ある方は、ぜひお問い合わせください。