移行対象VM およびAVS 環境構成図

基幹システムのクラウド移行をAzure VMware Solutionで実現。オンプレミス時の運用課題を解消し、DX推進を加速
設立から30年以上にわたり、人材サービスを通じて、人や企業、そして社会の発展に貢献してきたヒューマンリソシア株式会社。「人材」に関する多くの課題に対し、人材派遣、人材紹介、転職サイト運営などに加え、RPAをはじめITソリューションを活用したデジタル化支援など、多岐にわたるソリューションを提供している。同社は今回、オンプレミスの基幹システム基盤をユニアデックスとともにAzure VMware Solutionに移行。従来の運用課題を解消して将来の事業成長にも安心、安全なクラウド環境を実現した。
導入前
導入後
人材派遣事業は人手を介在する業務が多く、お客さまへの提案などの対応遅れは市場競争においてマイナスとなる。将来的な労働人口の減少も見据えて同社は近年、業務効率化のためのDXに注力。新たにDX推進室を設立し、マーケティングデータと基幹システムデータを活用した業務効率化活動を行っている。
同社の基幹システムは2012年に構築。2017年の更改以降、オンプレミス環境のVMware vSphere上で稼働している。そこでは派遣ビジネスに関する顧客管理、案件管理、スタッフ管理、契約管理、勤怠、請求、給与などのさまざまなデータが含まれ、事業の成長とともに増大を続けている。利用中のシステムのサービス終了期限が迫ったこともあり、同社は見直しに着手した。
既存環境での課題は大きく3点あると、事業戦略推進本部 DX推進室 マネージャーの板倉正氏は次のように語る。
「1 点目は、システムリソース不足。取り扱うデータ量が増加し、サーバーのスペック問題が顕著になっていました。具体的にはディスクの空き容量の枯渇や、新しい仮想サーバーを稼働させるために新規にCPUの割り当てができないといった課題がありました。2 点目は、保守対応の負荷。年に数回、オンプレミス環境のネットワーク機器の障害などによりシステムが停止するトラブルが発生していましたが、外部ベンダーに保守を依存しているためにトラブル発生から問題解決までの時間がかかってしまうケースがありました。いつ発生するかわからないトラブルを未然に防ぐための人的工数の負担も大きく、この人的コストを低減することも急務となっていました。そして3 点目は、オンプレミス環境は複数のベンダーによって構築されているため、オンプレミス環境が複雑化し、システム全体の状況を把握することが困難となっていたことです。そのため内部で把握、対処できる環境に変える必要がありました」
更改検討に際し、現行のシステム資産を安全に継続利用できる環境であることが、経営視点での要件だった。
既存環境では古いOS上で動作しているアプリケーションもあり、現行システムの互換性を保ちつつ、これまでの課題解決を両立させる必要があったという。解決策として、システム資産をそのまま生かせるVMwarevSphereを引き続き利用することは決まったが、システム基盤についてはオンプレミス環境で刷新するか、「VMware×クラウド」環境へ移行するか並行して検討を進めた。検討段階においてクラウド案のほうがオンプレミス案よりコスト効率が良いことが判明。さらにオンプレミス案については社会情勢や半導体不足などで機器調達に時間がかかり、移行プロジェクト期間がクラウド案に比べて長期化する懸念があった。
同社は2021年11月から、主要クラウドプラットフォーム3社にヒアリングを重ね、比較検討。最終的に2022年2月、AzureVMware Solution(以下、AVS)が選定された。
板倉氏はAVSを選定した理由をこう話す。「3社のうち1社は技術的に不安があり、残る2社で、当社既存システムの移行先として同条件での比較をし、もっとも収容効率が高くコストパフォーマンスが良かったAVSを選定しました。AVSと比べると他社はインスタンスに割り当てられているディスクのサイズが小さく、当社の環境には合いませんでした。最終的にはMicrosoft社との共創という、会社としての経営判断もありました」
同時期、同社は本プロジェクトのAVS 構築および移行パートナーとして、ユニアデックスを選定する。
板倉氏は「複数社の候補の中から導入パートナーとしてユニアデックスを選定した理由は、ユニアデックスのグループ企業内で社内システムをAVS へ移行した実績があり、その経験と技術力に裏付けられた提案をしてくれたこと。例えば、選定時、各社に対し技術的な観点の確認を進める中で『この場合どうなる?』『不具合が起こったとき、挙動としてはどうなる?』といった質問を多くしましたが、ユニアデックスは『理論的にはこうだが、それが実際の動作としては具体的にこうなる』と回答してくれました。また、中途半端な回答はせず、しっかり検証してから確実にフィードバックをくれるなど、他のベンダーとはひと味違いました」と語る。
さらに、板倉氏は「構築と移行は違う」として、次のように話す。
「クラウド環境でVMware の構築はできても、既存システムを確実に移行させることは容易ではありません。提案段階において実績ベースで具体的な移行方法についてしっかり回答してくれたのはユニアデックスだけで、今回が初めての取引ではありましたが、期待通り構築から移行完了まで、その実力を発揮してくれました」
構築および移行作業は2022 年3 月からスタートし、7 月に新プラットフォームでの稼働が開始された。
移行にあたっては、オンプレミス環境や自社のデータセンターをAzureと閉域網で直接接続するAzure ExpressRoute がセキュリティー、耐障害性で大きな効果を発揮。板倉氏は「他のクラウドと比べAzure は設定がシンプルでわかりやすく、理解もしやすかった。移行に必要な回線納期が遅れるなど想定外の状況も発生しましたが、ユニアデックスに臨機応変に対応いただき、予定通り移行作業を完了することができました」と話す。
さらに今回、同社ではAzure 以外のメガクラウドIaaS 上で稼働中のサーバーもAVS に集約し、運用効率を高めたいとの狙いもあった。
その解決手法として、ユニアデックスは今後の運用も見据えたサードパーティー製品の移行ツールの活用を提案した。板倉氏は「結果的には段階的な移行を計画しているため、現状はマルチクラウド環境となりましたが、Azure はマルチクラウド接続においても結果がプレビューしやすく、不具合があっても調べやすい。
ユニアデックスは移行時のみならず、将来的な運用も見据えた最適なツールをその都度選択するなど、マルチベンダーとしての対応力を発揮してくれました」と評価する。
基幹システムのAVS への移行により、同社はディスクおよびCPU不足が解消し、利用できるリソースはおよそ3 倍に。現状800 名強が利用するシステムは、倍近い利用拡大にも備えられる環境が整備された。
本プロジェクトの成果について、板倉氏は「クラウド移行を選択したことで、プロジェクト期間もオンプレミスで更改するよりも半分以下に大きく圧縮できました。また、初期コストにおいても、オンプレミスと比較して3 ~ 5 割は削減できたと思います。運用コストも今後は、他のクラウドで利用中のリソースをAVSに集約することで、大幅な削減を見込んでいます」と語る。
さらに今回、AVSの採用によりこれまで3名で担当していた保守体制は、1名で対応可能となった。
「これまでの煩わしいインフラ運用から解放されました。またAVSは本番稼働後に大きな障害もなく、非常に安定しています。障害時は自動でフェールオーバーしてくれますし、OS障害も予見できてサーバー監視の負荷が大きく軽減できました。今回整備した環境でさらなる運用の安定と効率化を進め、全社の事業推進、業務効率化に貢献するIT活用企画に注力していきたいと思います」(板倉氏)
労働人口が減少する中、業務効率化や利益率向上を目指しDXを推進する企業は多い。その中で、今クラウド移行を進める必要性を、板倉氏は次のように語る。「移行の手間や工数を考えたとき、なかなか踏み切れない気持ちもわかります。しかし、既存のオンプレミス環境を使い続けることは、5 年後のシステムを運用する人とコストの観点で、決して得策とは言えません。クラウド移行は新たなことに取り組むことが苦手な方には非常にハードルが高いと思いますが、しっかりとしたパートナーを選ぶことで、その不安は解消できると思います」
2022年09月取材
ユニアデックスは自グループでのAVS導入経験を踏まえた設計・移行計画の策定、業務影響が出ない最適な移行作業を実施してくれました。Microsoft 社とも緊密に連携しており、両社から意見が聞けることで、非常に判断しやすかったです。構築ではなくシステム移行をスコープに文字通り並走してくれたことで、進行において不安はありませんでした。今後も信頼できるパートナーとして、安心・安全なクラウド環境のためのサポートを期待しています。 (板倉氏)
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