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サイバー攻撃対策の基本とサイバーレジリエンス構築のポイント

ランサムウエアをはじめとするサイバー攻撃は年々巧妙化しており、情報漏えいや事業停止、信用失墜など企業経営に深刻な影響を及ぼしています。もはや従来型の入口対策だけで被害を防ぐことは難しく、侵入後の検知・対応・復旧までを見据えた多層防御とサイバーレジリエンスの考え方が求められています。
本記事では、最新のサイバー攻撃の手口や経営リスクを整理した上で、企業が取り組むべき具体的なセキュリティ対策と、事業継続を支えるサイバーレジリエンスについて解説します。

サイバー攻撃の現状と変化:企業を取り巻く脅威はどう変わったのか

近年、サイバー攻撃は巧妙化するとともに、攻撃対象も拡大しています。その結果、企業規模や業種を問わず被害に遭うリスクが高まっており、企業を取り巻く脅威はこれまで以上に深刻化しています。
こうした背景から、サイバー攻撃は一部の企業だけの問題ではなく、あらゆる組織が備えるべき経営課題となっています。本章では、攻撃者の目的や手法、攻撃対象の変化について解説します。

攻撃者の戦略と目的の変化

警察庁が公表した「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、サイバー犯罪の検挙件数・被害額ともに右肩上がりに拡大しています。しかし、数字以上に深刻なのは、攻撃の目的と手法の質的な変化です。
かつてのサイバー攻撃はシステムの破壊やデータ改ざんが主な目的でした。しかし現在は、金銭獲得を目的とした組織犯罪へと変化しており、企業規模を問わずあらゆる組織が攻撃対象となっています。ランサムウエアによる身代金要求や情報公開を利用した脅迫は、その代表例です。
また、生成AIの普及により、フィッシングメールの作成や情報収集の効率化が進み、攻撃を実行するためのハードルも低下しています。これまで高度な技術を必要としていた手法がより利用しやすくなり、攻撃の量と質の両面で脅威が増しています。

サプライチェーンを経由した攻撃の脅威

攻撃対象は自社だけにとどまりません。子会社や取引先、さらには保守ベンダーなどのサプライチェーン全体が攻撃の対象となります。こうした関係先を経由して侵入を図るのが、サプライチェーン攻撃です。セキュリティの脆弱な提携先を足掛かりに、最終的に大手企業の中枢システムへの侵入を狙うサプライチェーン攻撃は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威(組織) 」でも常に上位に選出されています。
こうした背景から、企業は従来の前提にとらわれず、変化する脅威を踏まえた対策や備えを継続的に見直していく必要があります。


サイバー攻撃はどのように進行するのか?認証情報の窃取から被害発生までの流れ

前章で解説した通り、サイバー攻撃は収益を目的とした組織的な犯罪へと変化し、その手口も巧妙化しています。本章では、攻撃者が企業へ侵入し、被害を発生させるまでの代表的なプロセスを解説します。

STEP1 認証情報の窃取

攻撃の起点となるのが認証情報の窃取です。攻撃者はフィッシングメールやなりすましサイトなどを利用してID・パスワードを盗み出し、システムへの侵入を試みます。生成AIの悪用により、これらの手口は年々巧妙化しています。

STEP2 正規アカウント悪用による侵入

攻撃者は盗んだ認証情報を利用してシステムへのアクセスを試みます。正規のID・パスワードによるログインは正常な利用と区別しにくく、従来のセキュリティ対策だけでは検知できない場合があります。さらに近年は、多要素認証(MFA)を悪用したMFA疲労攻撃も確認されています。

STEP3 ネットワーク内での横展開と探索

侵入後の攻撃者は、ネットワーク内の他の端末やサーバーへ移動しながら、重要なシステムや認証情報を探索します。これを横展開(ラテラルムーブメント)と呼びます。その際、PowerShellなどの正規ツールを悪用するケースが少なくありません。この手法はLiving off the Land(環境寄生型)と呼ばれ、通常の管理作業と見分けが付きにくいため、検知が難しいという特徴があります。

STEP4 管理者権限の奪取と被害の拡大

攻撃者は横展開を通じて、Active Directoryサーバーなどの重要なシステムを探し、管理者権限への昇格を狙います。管理者権限を奪取すると、ネットワーク全体へのアクセスが可能となり、業務システムやファイルサーバー、バックアップ環境まで制御できるようになります。ランサムウエア攻撃では、この段階でデータの暗号化やバックアップの破壊が行われます。さらに近年は、身代金支払いの可能性を高めるため、事前に窃取した機密情報の公開をちらつかせるだけでなく、取引先や顧客への連絡、DDoS攻撃などを組み合わせて圧力をかける手口も確認されています。

図1:サイバー攻撃の進行プロセス


サイバー攻撃が企業にもたらす甚大な被害と経営リスク

サイバー攻撃による被害は、単なるシステムの復旧費用にとどまりません。その影響は事業継続や企業価値にも及び、経営上の重大なリスクとなります。本章では、企業が直面する主な被害と経営リスクについて解説します。

直接的な経済損失と事業停止による機会損失

サイバー攻撃を受けると、システム調査やデータ復旧、外部専門家による支援など、多額の対応費用が発生します。大規模なランサムウエア被害では、復旧コストが数億円に及ぶこともあります。
しかし、企業にとってより深刻なのは事業停止による機会損失です。生産ラインや店舗システム、決済基盤などが停止すれば、本来得られるはずだった売上や利益が失われます。

信用の毀損と長期的な経営への影響

情報漏えいは、顧客や取引先からの信頼低下を招き、企業の事業活動に長期的な影響を及ぼします。近年のランサムウエア攻撃は情報窃取や公開の脅迫を伴うケースも多く、バックアップから復旧できた場合でも、信用失墜や法的対応などの課題が残る可能性があります。

知的財産の流出による競争力の喪失

知的財産の流出は、企業の競争優位性を失わせる重大なリスクです。設計図や製造ノウハウ、ソースコードなどの機密情報が流出した場合、その影響は数年後に市場シェアや収益の低下として現れる可能性があります。

事業活動への影響と業務停止リスク

サイバー攻撃によってシステムが停止すると、顧客対応や営業活動、受発注、会計処理などのさまざまな業務に支障が生じます。その結果、業務の遅延や停止を招き、顧客対応やサービス提供にも支障が生じるなど、企業活動全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

サプライチェーン上の影響と取引関係の断絶

サイバー攻撃の影響は自社だけにとどまりません。事業停止や情報漏えいが取引先に波及した場合、損害賠償や取引停止につながる可能性があります。特にサプライチェーンの一員として事業を支える企業にとっては、セキュリティ上の問題が企業の存続を左右するリスクとなります。


組織を守り抜くための具体的なセキュリティ対策5選

サイバー攻撃は複数の段階を経て進行するため、単一の対策で防ぎ切ることは困難です。認証、監視、権限管理、脆弱性対策、バックアップといった複数の施策を組み合わせた多層防御を実現することで、攻撃による被害の発生や拡大を抑制できます。本章では、企業が優先的に取り組むべき5つの対策を解説します。

ID・認証基盤の強化

ID・パスワードの窃取や不正利用に備えるために、認証基盤の強化は最も重要な対策の一つです。多要素認証(MFA)の導入に加え、異常なログインの検知やアクセス制御を強化し、IDを適切に管理する仕組みを整備する必要があります。特に管理者アカウントなど重要なIDについては、より厳格な認証や監視を実施することが重要です。

運用できる監視体制の構築

EDRやXDRなどの検知ソリューションは有効ですが、導入だけでは十分ではありません。重要なのは、脅威を継続的に監視し、発生時に迅速に対応できる運用体制を構築することです。アラート対応のルールや責任者を明確にすることで、対策の実効性を高められます。また、24時間365日の監視体制を整備し、継続的に脅威へ対応できる環境を構築することが重要です。

管理者権限の削減とネットワーク分離

攻撃者は最終的に管理者権限の奪取を狙います。そのため、業務に必要な範囲に限定した権限付与や、管理者アカウントと通常利用アカウントの分離など、最小権限の原則を徹底することが重要です。また、ネットワークを分離し、重要システムへのアクセスを制限することで、攻撃者による横展開や被害拡大を抑制できます。特にOT環境を持つ企業では、IT環境との適切な分離やセキュアなリモートアクセス環境の整備が求められます。

脆弱性管理の自動化と継続的な運用

ソフトウエアやOSの脆弱性は、攻撃者に悪用される代表的な侵入口です。資産管理ツールなどを活用して脆弱性の把握とパッチ適用を効率化し、継続的な更新サイクルを確立することが重要です。また、どのシステムに高リスクの脆弱性が存在するのかを継続的に把握し、優先順位を付けて対応する仕組みも求められます。

復旧戦略としてのバックアップ設計

バックアップは単なる保険ではなく、事業継続を支える復旧戦略として位置付ける必要があります。不変バックアップなどを活用し、攻撃者による改ざんや削除を防ぐ仕組みを整備することが重要です。
また、ランサムウエア攻撃では、バックアップからの復旧だけでは解決できないケースもあります。情報窃取や公開の脅迫を伴う攻撃に備え、有事の意思決定体制や対応手順をあらかじめ定めておく必要があります。


被害を前提としたサイバーレジリエンスの構築と事後対応

多層防御によってリスクを低減することは重要ですが、すべてのサイバー攻撃を防ぎ切ることは困難です。そのため、被害を受けた後の対応や事業継続まで見据えた備えが求められます。
こうした考え方を支えるのが「サイバーレジリエンス」です。サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃による被害を受けても事業を継続し、迅速に復旧するための組織的な能力を指します。
サイバーレジリエンスは、一つの製品や対策だけで実現できるものではありません。次に、企業が取り組むべき具体的なポイントを解説します。

ビジネスインパクト分析による優先順位の設定

レジリエンスを構築する第一歩は、重要業務と復旧優先順位を明確にすることです。すべてのシステムを同時に復旧することは現実的ではありません。ビジネスインパクト分析(BIA)を通じて重要業務を洗い出し、復旧目標時間(RTO)や復旧目標地点(RPO)を定めることで、有事の際も優先順位に沿った対応が可能になります。

確実なバックアップと復旧テスト

被害から迅速に復旧するためには、信頼できるバックアップ環境が不可欠です。しかし、その実効性を確保するためには、定期的な復旧テストを実施し、有事の際にバックアップから迅速に復旧できることを確認しておくことが重要です。また、近年のランサムウエア攻撃では、復旧だけでなく情報漏えいへの対応も求められるため、バックアップだけではなく有事を見据えた備えを進めておく必要があります。

有事の意思決定フローの確立とインシデント対応訓練

インシデント発生時には、経営層や情報システム部門、法務部門、広報部門が迅速に連携できる体制が求められます。あらかじめ役割や判断基準を定めておくことで、初動の遅れや意思決定の混乱を防ぐことができます。
また、机上演習や復旧訓練を定期的に実施し、実際のインシデントを想定した対応を検証することも重要です。

図2:多層防御とサイバーレジリエンスの考え方


サイバー攻撃に備えるために、今求められること

サイバー攻撃は、認証情報の窃取から侵入、横展開、ランサムウエア実行まで、複数の段階を経て被害へと発展します。また、その影響は情報漏えいや事業停止だけでなく、信用失墜やサプライチェーンへの波及など、企業経営全体に及びます。だからこそ、技術対策だけでなく、事業継続や復旧まで見据えたセキュリティ対策とサイバーレジリエンスの強化が重要です。

ユニアデックスでは、セキュリティリスクの可視化から対策の導入、運用監視、バックアップ・復旧対策まで、お客さまの環境や課題に応じたセキュリティの強化を支援しています。自社の対策状況に不安を感じている方や、サイバーレジリエンスの強化をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。