DX推進やAI活用が企業の競争力につながる時代へ対応
スタートアップ企業の発掘を通じて企業に多様な課題の解決方法を提供
高度化・複雑化する課題の解決にはスタートアップとの協業が不可欠
ユニアデックスでは2023年から、有望なスタートアップ企業を見いだすための「スタートアップ企業調査」を行っているとのことですが、どのような背景からスタートした取り組みなのでしょうか。

ユニアデックス株式会社
ソリューションマーケティング
本部 本部長 片澤 友浩
ユニアデックス 片澤 友浩(以下、片澤):当社は海外の主要なITインフラ製品を日本市場へ導入し、独自のインテグレーションや運用・保守などの価値を付加して提供するビジネスモデルに対して、お客さまからご支持いただき成長を続けてきました。しかし、ITの世界における激しい変化に合わせ、当社のビジネスモデルも変えていかなければなりません。
そうした危機感が特に高まったのは、2010年代後半のことです。日本企業の間でもDXの必要性が強く叫ばれるようになり、米国ではイノベーションを求め、スタートアップ企業への投資がますます盛んに行われました。そんな中、ユニアデックスは従来型のビジネスを継続していると言わざるを得ませんでした。日々、高度化・複雑化していくお客さまのニーズや課題の解決にリーチし、今後の市場創出をリードしていく従来とは異なるビジネスモデルの検討が必要なのは明らかでした。
当時、先進的なソリューションの発掘と、それらの日本市場への投入に注力している競合他社に対して、ユニアデックスは“二番手”のポジションに甘んじており、この状況を内側から抜本的に変えていく必要がありました。そこで、私が2018年に海外駐在となったことを機に、現在の活動の前身となる「スタートアップ企業調査」を開始しました。
途中で発生したコロナ禍により、特に海外での活動が困難となった時期もありましたが、2023年4月の帰国を機に、より本格的な取り組みを再開しました。自分たちから積極的に“一番札”をつかみ市場をリードすべく、ソリューションマーケティング本部を中心とした全社的な体制を整えました。
二番手として他社を追随するのであれば手堅い市場でビジネスが展開できますが、市場の“ファーストムーバー”となるには大きなリスクを負う覚悟が必要になると思います。当時はどのように感じていたのでしょうか。
片澤:自ら先陣を切るとなれば「そのスタートアップ企業のどのような点がユニークなのか」「そのソリューションは日本企業のDXにどのように寄与するのか」といった価値を、市場に示していかなければなりません。確かに、決して簡単なことではありませんしリスクも伴います。しかし、企業を取り巻く経済環境がますます不確実性を増している中、ユニアデックスが存在意義を高め、より多くのお客さまから先進的な企業としての認知を得るには、この取り組みは不可欠な挑戦だと考えました。
すでにスタートアップ8社の製品やサービスを市場投入
実際に「スタートアップ企業調査」は、どのような手法で行われているのでしょうか。
片澤:有望なスタートアップ企業を見いだすための具体的な調査方法は、大きく4つあります。
1つ目は、インターネットを通じた情報収集です。世界各国のメディアから配信されるニュース記事、プレスリリースなどの幅広い情報に目を配っています。
2つ目は、スタートアップ企業を網羅した企業データベースサービスの利用です。成長性の高いスタートアップ企業を発掘するための重要な情報源となります。
3つ目は、米国や欧州で開催されるカンファレンスや展示会などのイベントへの参加です。スタートアップ企業が集まる現場に足を運び、スタートアップ企業と直接コンタクトを取ることで、有益な情報が得られます。
4つ目は、BIPROGYグループのキャナルベンチャーズ社が手掛けているCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のネットワークや、海外駐在員が個人的なつながりを持つVC(ベンチャー・キャピタル)からの情報収集です。VCのネットワークからは、すでにスクリーニングされた、スタートアップ企業に関する質の高い情報を得られる利点があります。
こうした調査手法から、技術の独自性や日本市場とのマッチングなどを基準にスタートアップ企業をピックアップします。そうした企業を「ネットワーク」「セキュリティ」「クラウド関連」「SaaS」「デジタルワークプレース 」「AI」といったカテゴリーに分類し、それぞれの領域において、他社がまねできない要素を有している企業を提携候補として選定します。中でも重要なのは、ユニアデックスがすでに手掛けているプロダクトやサービスに欠けている要素を補完する価値を有しているかどうかです。加えて各社の資金調達先、ファウンダーの経歴や基本理念、日本市場への関心度なども重要なチェックポイントです。
2023年4月から2025年11月現在までの活動実績としては、延べ約200社に及ぶスタートアップ企業の調査を実施しています。そのうちの8社とパートナー契約を締結し、ユニアデックスからプロダクトやサービスをリリースするに至っています。
図1 「スタートアップ企業調査」における4つの調査方法
米Lazarus AI社と日本初の戦略パートナー契約を締結
ユニアデックスは、2025年7月に米Lazarus AI社との戦略パートナー契約締結を発表しましたが、この契約締結も「スタートアップ企業調査」の成果だと聞きました。どのような狙いから生まれたパートナーシップなのでしょうか。
片澤:おっしゃる通り、Lazarus AI社とは「スタートアップ企業調査」の結果を受けて交渉を開始し、戦略パートナー契約に至りました。Lazarus AI社の日本初の戦略パートナーとなることを目指し、精力的な交渉に当たりました。水面下での競合他社の動きも察知していた中、Lazarus AI社に対してエンジニア派遣を行うなど、早い段階から人的交流を行うことで、互いの信頼関係を構築したことが功を奏しました。他社に先駆けた日本初となるこの契約を受け、Lazarus AI社の安全かつ高精度なAIサービスと、ユニアデックスのAIインフラ構築技術を組み合わせたソリューションの提供を開始しています。
Lazarus AI社のAIサービスは、生成ではなく抽出に特化している点が特徴です。ChatGPTをはじめとする一般的な生成AIは、文章の要約・作成や画像生成など「何かを作りだす」ことに特化しています。これに対して同社のAIサービスは、大量のデータから「必要な情報を高精度で抽出すること」に卓越した能力を発揮します。調査段階で同社のAIサービスに初めて触れた際に、推理小説を読み込ませただけで、何も学習させることなく主人公や犯人を正確に答え、しかも日本語で対話できたことに大きな衝撃を受けました。
Lazarus AI社のソリューションが持つ特徴は、どのような業界のお客さまの課題解決にマッチするのでしょうか。
片澤:Lazarus AI社のソリューションは、データをクラウドに移行するのではなく「データがある場所にAIを持っていく」という発想に基づき、自社でクローズドな環境を構築し、データをオンプレミスに置いたままで利用できるという特徴を持っています。また、自社のデータのみを使用するため、ハルシネーション(誤情報生成)も避けられます。事前学習も不要であるため、AIの利用としては比較的小さな規模での運用が可能という点も特徴の1つです。
製造業や医療機関、文教、公共といった分野のお客さまは、大量のデータを保有しながらもセキュリティやコストなどに問題があり、クラウド移行がほとんど進んでいないケースが珍しくありません。その結果「データがオンプレミスでしか利用できないため、クラウドで提供されている生成AIサービスを利用できない」というジレンマを抱えています。こうした課題を、Lazarus AI社のソリューションで解決できると考えています。
優れたデータ抽出性能と、クローズド環境で高いセキュリティが確保できる特徴は、例えば製造業における部品番号の検索や金融機関における取引情報の検索など、常に高い正確性が求められる業務用途に特に適していると考えています。
図2 Lazarus AI社の生成AIサービスにおける利用環境の特徴
スタートアップ企業の発掘を全社規模の文化にしていく
今後も「スタートアップ企業調査」は継続していくとのことですが、将来的な展望はお持ちですか。
片澤:ユニアデックスでは「スタートアップ企業調査」を通じて、引き続きLazarus AI社と同様に優れたソリューションを持つスタートアップ企業とのパートナーシップにつながる活動をさらに拡大していきます。
当初は5~6人のチームでスタートしたプロジェクトでしたが、現在では40名近いメンバーが、何らかの形で有望なスタートアップ企業の発掘に当たるなど体制も大きく強化されました。
ただ、現在の体制でも十分とは考えていません。本来、スタートアップ企業の発掘と取り込みには、私たちの発掘部門、技術を確認するエンジニア部門、お客さまへ届ける営業部門など、会社全体として取り組むべきものだからです。あらゆる事業部門の社員がお客さまから新たな課題のご相談を受けた際、その解決策としてスタートアップ企業との連携を主体的に検討する姿勢を、企業文化として醸成していくことが重要です。
既存の商材だけを見た狭い発想やビジネス展開から脱却し、多様なスタートアップ企業と連携し、お客さまへ提供する価値を拡大していくことが、ユニアデックスの目指す姿です。
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