Webシステム・API への不正アクセスに対し、いますぐ企業が確認すべき5つのポイント
2026年9月前後から、国内組織において不正アクセスによる個人情報などの漏えい被害が相次いで公表されています。今回の状況で注意したいのは、特定の製品や1つの脆弱性だけの問題として捉えられない点です。
Web、API※1、ネットワーク、クラウド、ID、サーバーは、それぞれ独立して存在しているわけではありません。攻撃の入口だけでなく、通信経路、到達の可能性、侵害後の横展開、検知、隔離、復旧までを1つの流れとして捉えることが重要です。
本記事では相次ぐWebシステム・APIへの不正アクセスに対し、ネットワークとセキュリティの視点から、いま企業が確認すべき5つのポイントを解説します。
はじめに
一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター(以下、JPCERT/CC)は、相次ぐ不正アクセス事案について、既知脆弱性の探索・悪用、管理不備、API経由での不正操作、アプリケーションサーバーへのWebシェル※2設置など、複数の攻撃パターンを示しています。被害を受けた対象には、BIツール(Business Intelligenceツール)など、本来は不特定多数の利用者からのアクセスを想定していない内部向けシステムも含まれており、「社内向けのつもり」でも設定や公開状態によっては外部から到達できてしまうことがあります。
国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、公開されているAndroidアプリを解析し、その情報を手掛かりにバックエンドを攻撃する手法を「A2B攻撃※3」と命名しました。iOSアプリや、外部向けAPIを持つWebサービスにも同様のリスクがあるとされています。さらに2026年10月21日には、遠隔からの任意コード実行につながる可能性があるPHPの重大な脆弱性が公表されています。
これらは個別には異なる事象です。2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性は、2026年9月前後の個人情報漏えい事案の直接の原因として確認されたものではありません。自社に何が存在し、何が外部から見え、どこまで通信できるのかを確認するとともに、どのような弱点があるのか、攻撃を受けた際にそれを検知し、被害範囲を限定でき、加えて、安全な状態へ戻せるのか、までを確認する必要があります。
また、今回のような事象を個別の脆弱性や1つのセキュリティ製品だけの問題として見るのではなく、システム全体の「つながり」の中で捉えることが重要です。 1つのWebサービスでも、インターネット、DNS/CDN/WAF※4、ファイアウオール/Load Balancer、Web/アプリケーションサーバー、API、データベース/クラウドサービスなど、多くの技術要素がネットワークを介してつながっています。正規のIDやAPIキーが悪用される場合には、単純に不正通信を遮断できたかどうかだけでは被害の有無を判断できません。
誰が、どこから、どのシステムへアクセスし、その後どのような通信が発生したのか。ネットワーク、認証、アプリケーション、サーバー、クラウドの情報を組み合わせ、時系列で判断する視点が重要です。
Web/APIサービスを構成する主な接続関係
過去の記事でも、クラウド利用や働き方の多様化によってIT資産が社内ネットワークの内外へ広がり、アタックサーフェス※5(攻撃対象領域)が拡大していることを取り上げました。WebやAPIだけでなく、VPN、ID、クラウド上のデータ、ネットワーク機器を含めて、境界が分散していることを前提に対策を考える必要があります。
特定製品や1つの脆弱性だけを追いかけない
昨今の状況を、1つの製品や特定の脆弱性だけの問題として捉えることは適切ではありません。攻撃者は、既知脆弱性、設定不備、公開された管理機能、漏えいした認証情報、APIの認可不備など、その時点で利用できる弱点を組み合わせます。
企業の外部接点も増えています。従来のWebサイト、ファイアウオール、VPNに加え、API、スマートフォンのアプリケーション、SaaS、IaaS/PaaS、管理画面、開発・検証環境、クラウドストレージ、APIキーやクラウド認証情報などがアタックサーフェスになり得ます。さらに、BIツールや従業員向けの管理システムなど、本来は社内利用を想定しているシステムも、設定や公開状態によってはインターネットから到達できてしまうことがあります。自社運用かクラウドサービスかを問わず、外部から到達できない状態にあるかの確認が必要です。
このため、「現在流行している攻撃は何か」を見るだけではなく、「自社には攻撃可能な弱点がどこに残っているか」を継続的に確認する必要があります。
確認観点
- 外部公開されている資産、サービス、API、管理画面を一覧化する
- 資産ごとに利用目的、管理責任者、公開の必要性を明確にする
- 一時利用の検証環境や旧サブドメイン、廃止予定システムも確認する
- 委託先・再委託先やクラウドで管理される公開面を確認する
- クラウドサービス・SaaS・VPNなど、利用中の外部サービスと、そこで使用しているアカウントを洗い出す(部署単位で契約・利用しているものを含む)
- BIツールや管理系システムなど、社内利用を前提としたシステムが、外部から到達できる状態になっていないかを確認する
攻撃の「入口」がWeb画面とは限らない
公開されているアプリケーションやフロントエンドは利用者の端末上で動作するため、接続先、パラメーター、応答形式などが解析される可能性があります。NICTは、公開されているAndroidのアプリケーションの解析を手掛かりに、裏側のAPIが攻撃された事例を確認しており、iOSのアプリケーションやWebサービスでも同様のリスクがあるとしています。「APIのURLを公表していない」「アプリケーションからしか使わない」という状態は、安全性の十分な根拠になりません。アプリケーション内の署名処理や難読化を施していても、それだけに頼ることはできません。
特に重要なのが、認証と認可を分けて考えることです。正規ユーザーであることを確認できても、そのユーザーが対象データや機能を利用してよいとは限りません。オブジェクト単位・機能単位での認可が不足すると、正規に見えるリクエストで情報にアクセスされる可能性があります。また、攻撃はログイン不要のAPIだけが対象ではありません。ログイン後に使えるAPIが狙われることもあります。NICTは、実際に狙われている主な弱点として、サーバーが外部の指定先へ通信してしまう問題(SSRF※6)、任意のコードを実行させられる問題(RCE※7)、データベースへの不正な命令の混入(SQLインジェクション※8)、他人のデータにアクセスできてしまう認可の不備(IDOR/BOLA※9)を挙げています。
APIで確認したい技術項目
- すべてのAPIエンドポイントを把握し、不要・旧版を停止する
- サーバー側で認証・認可を実施し、クライアント側のロジックだけに依存しない
- 利用者、テナント、オブジェクト、機能単位で権限を検証する
- APIキー、トークン、秘密情報をアプリケーションへ固定的に埋め込まない
- レート制限、入力値検証、異常な列挙アクセスの検知を実施する
- APIエラーや拒否応答も含めてログを取得し、調査可能にする
- 外部のURLを取得・呼び出す機能は、通信先を必要なものに限定する
AI・自動化によって弱点探索の速度が変わる
AIや自動化は、防御側だけではなく攻撃側でも、アプリケーションの解析、既知脆弱性の探索、API仕様の推測、標的ごとの試行の効率化に利用され始めています。JPCERT/CCは、攻撃者がAIを用いたペネトレーションテストの基盤を悪用し、インターネットに公開されたWebアプリケーションに対して脆弱性の探索や攻撃を試みる事例を確認しています。一方で、すべての事案でAIの利用が確認されているわけではありません。重要なのは、AIの利用を前提に、攻撃者が弱点を探すためのコストと時間が低下していると考えて備えることです。
そのため、「見つからなければ安全」ではなく、「見つかり、解析されても安全性が保たれる」設計が必要です。未知の攻撃だけに備えるのではなく、既知の基本的な弱点を迅速に是正し、設定や権限のずれを継続的に見つける運用が重要になります。 特に、公開されたままの古いシステム、更新されていないソフトウエア、使われていないアカウントや認証情報は、自動化された探索の対象になりやすくなります。
PHPの重大脆弱性「PHP2Shell」への対応
2026年10月21日、PHPについて2つの脆弱性、CVE-2026-109618およびCVE-2026-109619(通称:PHP2Shell)が公表されました。独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)によれば、前者はメモリー不足(OOM)のエラー処理、後者はリクエスト処理に関連し、悪用された場合には遠隔の第三者によって任意コードを実行される可能性があります。深刻度はCVSS※10 v4.0で9.2と評価されています。対象には、PHP-FPM※11やApacheのmod_php※12など主要な動作方式が含まれます。特にmod_phpでは、認証されていないリクエストによって、アプリケーションコードが実行される前に本脆弱性を悪用できることが示されているため、「ログインが必要なサイトだから安全」とは言えません。
PHP2Shellの対象系列と修正版
| PHP 8.2系 | 8.2.35 |
| PHP 8.3系 | 8.3.36 |
| PHP 8.4系 | 8.4.27 |
| PHP 8.5系 | 8.5.12 |
| PHP 8.1以前 | PHPプロジェクトの通常サポート対象外。 OS・製品提供元の修正提供状況を確認し、サポート対象バージョンへの移行を進める |
PHPは、独自開発したWebシステムだけでなく、各種ソフトウエア製品やLinuxディストリビューションが提供するパッケージの中でも利用されます。CMS(コンテンツ管理システム)やECなどのパッケージ製品、管理画面を備えた機器・アプライアンスの内部で動いている場合もあります。PHPを直接導入した記憶がないという理由だけで対象外と判断せず、利用製品・OS・コンテナイメージを含め、提供元の情報を確認する必要があります。また、OSや製品の提供元が修正を反映したパッケージを配布している場合は、バージョン番号が表と一致しなくても対処済みのことがあるため、提供元の情報で確認してください。
PHP対応はパッチを適用して終了ではない
脆弱性判明後に修正版へ更新しても、それ以前に攻撃されたかどうかは別の問題です。JPCERT/CCは、修正版の適用に加えて侵害有無の調査を求めています。調査は脆弱性の公表日以降に限らず、保存されている範囲でそれ以前のログも確認対象とすることの検討が必要です。
確認対象となる痕跡
JPCERT/CCは、以下のような痕跡の確認を挙げています。
- 不自然に長い、または異常な形式のPHPSESSID Cookie
- 不審なmultipart/form-data形式のHTTPリクエスト
- その前後のPHPメモリー上限関連エラー、HTTP 500エラー
- PHPワーカープロセスの予期しない異常終了や頻繁な再起動
- 不審なプロセス、外部通信、ファイル作成、権限変更
これらの痕跡が確認できない場合でも、攻撃を受けていないと断定できるとは限りません。単一の検知ルールに依存せず、Web、プロセス、ネットワーク、ファイル、認証など複数の観点を組み合わせます。ログは、サーバーの再起動や更新、保存期間の経過によって失われることがあるため、更新作業の前にログを保全することが重要です。また、公開されている不審な通信元の情報との照合だけに頼らず、アクセスの量、頻度、通常と異なる使われ方も確認します。
PHP重大脆弱性への対応フロー
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JPCERT/CC「PHPにおける複数の脆弱性に関する注意喚起」およびIPA「PHPの脆弱性対策について」を基にユニアデックスが作成
すぐにパッチを適用できない場合
企業システムでは、互換性確認、アプリケーション改修、保守契約、担当者の不在などにより、直ちに更新できないことがあります。しかし、更新できないことと、脆弱な状態のまま公開を継続することは同義ではありません。
更新までの間は、提供元が示す緩和策、外部アクセスの制限、公開範囲の縮小、監視の強化などを組み合わせます。PHP開発チームも、設定変更などの暫定策は一部の攻撃経路にしか有効でなく、修正版への更新が完全な対策になるとしています。有効な暫定対策が難しく、被害可能性が高い場合は、外部アクセスの遮断やサービスの一時停止も判断対象になります。判断の際は、そのシステムがインターネットから直接到達できるか、重要な情報を扱っているか、ログインが不要で使われる部分があるかを基準にします。
WAF、IPS※13、EDR※14などの提供元が本脆弱性に関する検知、遮断、監視または隔離機能を案内している場合でも、対象範囲や前提条件は製品、シグネチャー、設定、適用モードによって異なります。PHP本体の脆弱性を解消するものではないため、修正版への更新の代替とせず、提供元の情報に基づいて有効範囲を確認します。
緩和策は恒久対策ではありません。特定の攻撃経路を減らせても、脆弱性そのものが解消されるとは限らないため、更新・移行計画、責任者、期限を明確にします。更新後も、PHP開発チームや製品提供元から追加の案内、修正リリースが出ていないかを継続して確認します。また、互換性確認やアプリケーションの改修に時間がかかる場合は、暫定対策と公開判断を誰がいつ決めるのかも定める必要があります。
ネットワークから見ると、重要なのは入口だけではない
Webサーバーへの攻撃を防ぐことは重要ですが、万一侵害された場合は、次にどこへ通信できるのかが被害範囲を左右します。Web、アプリケーション、データベース、管理ネットワーク、クラウド管理系の間で、必要以上の通信が許可されていないかを確認します。
また、Inbound通信※15だけでなくOutbound通信※16も重要です。侵害されたサーバーから外部へ自由に通信できる場合、追加ツールの取得、外部指令サーバーとの通信、情報の持ち出しなどにつながる可能性があります。 PHPの脆弱性が悪用された場合、PHPを動かしているアカウントの権限でコードが実行されるため、サーバー側の実行権限や書き込み可能な範囲を最小限にすることも、被害を抑える要素になります。
IDも「新たな境界」として確認する
ネットワークを分離していても、正規のIDや管理者権限が奪われれば、許可された経路を使って別のシステムへ移動される可能性があります。サーバーに保存されたAPIキーやクラウドの認証情報が窃取され、別のシステムへの不正アクセスに使われる可能性もあります。過去の記事では、攻撃者が管理者権限を狙い、侵入地点から別のシステムやネットワークへ移動するラテラルムーブメント※17のリスクを解説しました。特権アカウントの棚卸し、MFA※18、不要な権限の削減、権限変更や通常と異なる認証の監視を、ネットワーク制御と組み合わせて確認することが重要です。APIキーやトークンは有効期限を設けて定期的に更新し、侵害の疑いがある場合は速やかに失効・再発行します。
ネットワーク面の確認事項
- Web/アプリケーション/データベースなど役割の異なる層の通信を必要最小限にする
- 管理ネットワーク、バックアップ、監視基盤への経路を分離する
- サーバーからのOutbound通信を業務上必要な宛先・プロトコルへ制限する
- クラウドのSecurity Group※19、Network ACL※20、ルート、公開IPを確認する
- 異常時に対象ホスト・セグメント・IDを速やかに隔離できるようにする
- サーバーが保持するAPIキーや認証情報の有効期限と更新状況を確認し、疑いがある場合は失効・再発行できる手順を用意する
- 社内利用を前提としたシステムは、インターネットに公開しない、または接続元を限定し、実際に外部から到達できないことを確認する
Web/APIの異常をネットワークの動きとして見る
インシデントの兆候は、必ずしもアプリケーションログだけに現れるとは限りません。不審なHTTPリクエストが確認された場合、その前後で認証、WAF/ファイアウオール、DNS、プロキシー、エンドポイント/EDR、クラウド操作などに変化がないかを関連付けて確認します。 ただし、確認にはログが残っていることが前提です。サービスやシステムごとに保存期間が異なり、提供元でしか見られないログもあるため、調査したい期間のログが残っているかを事前に確認する必要があります。
例えば、WebサーバーでHTTP 500 Internal Server Errorが急増した直後に、新しい外部宛先への通信や不審プロセスが発生していれば、単なるアプリケーション障害とは異なる可能性があります。一方で、単一のアラートだけで即断せず、複数レイヤーの事実を時系列で突き合わせることが重要です。
侵害確認に利用する主な情報
| Web/アプリケーション | アクセス、Cookie、エラー、API応答、アプリケーション処理 |
| ID | ログイン、MFA、権限変更、トークン利用、サービスアカウント |
| ネットワーク | WAF、ファイアウオール、IDS/IPS、DNS、プロキシー、Flow、Inbound通信/Outbound通信 |
| エンドポイント/サーバー | プロセス、ファイル、メモリー、永続化、ワーカー再起動 |
| クラウド | 管理操作、設定変更、公開状態、IAM、監査ログ |
| ログ管理 | 保存期間、保存場所、提供元でしか確認できないログの有無 |
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JPCERT/CC「PHPにおける複数の脆弱性に関する注意喚起」を基にユニアデックスが作成
いま企業が確認すべき5つのポイント
① インターネットから見える攻撃面を把握する
管理台帳だけではなく、外部から到達可能なWeb、API、管理画面、VPN、クラウド、検証環境などを確認します。部署単位で契約・利用している外部サービスも含めて洗い出し、BIツールなど、本来は社内利用を想定しているシステムがインターネットから到達できる状態になっていないかも確認します。資産、公開状態、通信経路、利用目的、管理責任を関連付け、現在も公開が必要かを判断します。
② 脆弱性を「存在するか」ではなく「攻撃可能か」で考える
CVSSのスコアだけで判断するのではなく、外部からの到達性、実際の悪用状況、資産の重要度、保有するデータ、業務への影響を組み合わせて評価する必要があります。PHPのような重大脆弱性では、利用の有無、公開状態、更新の可否、侵害の有無を迅速に判断できる状態かを確認します。製品に組み込まれたPHPやサポート終了済みのバージョンも対象に含め、更新できない場合の公開判断、更新・移行の責任者と期限を明確にします。更新後も開発元から追加の案内が出ていないかを継続して確認します。
③ WebだけでなくAPIの認証・認可を確認する
APIごとに認証、利用者・テナント・オブジェクト単位の認可、秘密情報の管理、レート制限、不要エンドポイント、異常アクセスの監視を確認します。クライアント側の難読化や非公開URLだけに依存しません。ログイン後に使えるAPIや、外部のURLを呼び出す機能も攻撃対象になり得ます。
④ ログを保存するだけではなく侵害を判断できる状態にする
Web、認証、ネットワーク、エンドポイント、クラウドの情報を時系列で横断し、いつ、どこから、誰が、何を実行し、その後どこへ通信したかを追えるようにする必要があります。保持期間、時刻同期、分析責任者を平時から整理し、調査したい期間のログが残っているか、提供元でしか見られないログがないかも確認します。不審な通信元の情報との照合だけに頼らず、通常と異なる使われ方を確認できることが重要です。
⑤ 侵入を防ぐだけではなく、侵入されても広げない
Prevent(防御)、Detect(検知)、Contain(封じ込め)、Investigate(調査)、Recover(復旧)を一続きで設計します。システム間通信を最小化し、横展開と情報の持ち出しを抑え、証拠保全、隔離、影響調査、安全な復旧を実施できる状態にします。侵害の疑いがある場合にAPIキーやクラウドの認証情報を失効・再発行できるか、保有する個人情報や機密情報が必要最小限になっているかも確認します。
Recoverでは、サーバーを再起動できることだけでなく、業務データ、OS・ミドルウエアの設定、仮想マシンやコンテナイメージなど、業務システムを復元するための情報が保全されているかを確認します。バックアップが削除・改ざん・暗号化されることで復旧が妨げられるリスクがあるため、改ざん耐性のあるバックアップや平時からのデータ可視化が重要です。また、隔離後に安全な復旧点を選び、再侵入の原因を除去してからサービスを再開できる手順と判断体制を整える必要があります。
| No. | ||
|---|---|---|
| 1 | 攻撃面の把握 | 外部公開資産、API、管理画面、外部サービス、管理責任を把握する |
| 2 | 攻撃可能性の評価 | 脆弱性、外部到達性、悪用状況、資産重要度、業務影響を組み合わせる |
| 3 | APIの認証・認可 | 利用者・テナント・オブジェクト単位で権限を確認する |
| 4 | 侵害を判断できるログ | Web、ID、ネットワーク、エンドポイント、クラウドの情報を時系列で確認する |
| 5 | 侵害後の封じ込め・復旧 | 通信最小化、証拠保全、隔離、影響調査、安全な復旧を準備する |
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※
本稿の内容を基にユニアデックスが作成
5つの対策を「点」ではなくサイクルにする
5つのポイントは独立したチェック項目ではありません。これらを、次の6つのステップからなるセキュリティ対策の継続的な サイクルの中で組み合わせて 運用します。
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1.把握:
資産、API、公開面、外部サービス、通信経路、責任者を明らかにする
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2.評価:
脆弱性、脅威情報、悪用状況、到達可能性、業務影響から優先順位を決める
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3.対策:
パッチ、設定変更、認証・認可、アクセス制御、認証情報の更新を実施する
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4.監視:
Web、ネットワーク、ID、エンドポイント、クラウドの異常を確認する(ログが残っていることを含む)
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5.検証:
弱点の解消と更新の反映状況を確認し、利用可能なログや痕跡から侵害の有無を調査する
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6.改善:
環境・脅威・業務の変化に応じて見直す(サポート終了や新たな注意喚起を含む)
セキュリティ対策の継続的サイクル
新しいサーバー、クラウドサービス、ID、APIが追加されるたびにアタックサーフェスは変わります。ネットワーク構成や権限が変われば到達可能性も変化します。「一度安全を確認した」ことと「現在も安全である」ことは同じではありません。
このサイクルは、設定不備や過剰権限、既知の脆弱性を平時に見つけて是正するプロアクティブな対策と、攻撃・侵害の兆候を検知し、封じ込め、調査、復旧するリアクティブな対策の両輪で成り立ちます。どちらか一方ではなく、予防と対応を継続的につなぐことが重要です。 これらは情報システム部門だけで完結せず、経営層や事業責任者を含めて、平時から役割と判断基準を決めておく必要があります。
ネットワークとセキュリティを分けて考えない
Web、API、クラウド、サーバー、ID、ネットワークは、すべてがつながることでサービスを構成しています。そして攻撃者も、そのつながりを利用します。 一カ所の侵害から、認証情報や通信経路を使って別のシステムへ広がる可能性があります。また、担当部門や委託先が分かれていると、確認や判断の抜け・遅れが生じやすくなります。
ユニアデックスは、ネットワークとセキュリティの双方に向き合ってきた経験から、個々の対策だけではなく、それらが実際のシステムのつながりの中でどう機能しているかを見ることが重要だと考えています。
おわりに
相次ぐWebシステム・APIへの不正アクセス、A2B攻撃、PHP2Shellは、個別には異なる問題です。しかし、企業に突き付けられている基本的な問いには共通点があります。
- 自社に何が存在しているのか
- 何がインターネットから見えているのか
- どこまで通信できるのか
- どこに弱点が残っているのか
- 攻撃されたことに気づけるのか
- 侵害された場合、被害を限定できるのか
- 安全な状態へ戻し、再発防止につなげられるのか
個別のセキュリティ製品を導入すること、脆弱性へパッチを適用することは重要です。しかし、それだけでセキュリティ対策が完了するものではありません。
「対策を導入している」から「実際のシステム環境で対策が機能している」へ。
「パッチを適用した」から「影響範囲を把握し、利用可能なログや痕跡から侵害の有無を調査した」へ。
「侵入を防ぐ」から「侵入されても早く気づき、広げず、安全に復旧する」へ。
今回の一連の事案を一時的な緊急対応だけで終わらせず、自社のセキュリティ対策が実環境で期待通りに機能しているか、その実効性を改めて確認する機会にしていただきたいと考えています。
本稿は2026年10月26日時点で確認できる公開情報を基に作成しています。脆弱性情報や推奨対応は更新される可能性があるため、必ず各機関・開発元・製品提供元の最新情報をご確認ください。
専門用語の説明
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※1
API:ソフトウエアやサービス同士が機能やデータをやり取りするための接続仕様。Webやモバイルアプリの背後で利用される。
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※2
Webシェル:侵害したWebサーバーなどに設置され、Web経由でコマンド実行やファイル操作を行うために悪用されるプログラム。
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※3
A2B(App-to-Backend)攻撃:公開されているスマートフォンアプリなどを解析し、接続先やAPIに関する情報を手掛かりに、バックエンドシステムを狙う攻撃。
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※4
WAF:WebアプリケーションへのHTTP/HTTPS通信を検査し、攻撃と判断した通信の検知・遮断を行う仕組み。Web Application Firewallの略。
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※5
アタックサーフェス:攻撃者が侵入や不正操作の足掛かりとして狙い得る、外部公開資産、アカウント、API、設定、通信経路などの範囲。
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※6
SSRF:攻撃者がサーバーに不正な通信先を指定し、サーバー自身から内部・外部の別システムへリクエストを送らせる脆弱性。
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※7
RCE:脆弱性を悪用し、対象システム上で攻撃者が任意のコードや命令を実行できる状態。Remote Code Executionの略。
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※8
SQLインジェクション:入力値を通じて不正なSQL文を混入させ、データベースの参照、変更、削除などを試みる攻撃。
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※9
IDOR/BOLA:識別子やAPI要求を変更することで、本来権限のない他者のデータやオブジェクトへアクセスできてしまう認可不備。
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※10
CVSS:脆弱性の技術的な深刻度を共通尺度で評価する仕組み。
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※11
PHP-FPM:PHPの処理をFastCGI方式で実行・管理する仕組み。WebサーバーとPHP処理を分離して動作させる構成で利用される。
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※12
mod_php:Apache HTTP ServerのモジュールとしてPHPを実行する方式。
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※13
IPS:ネットワーク通信を監視し、攻撃と判断した通信を検知・遮断する仕組み。Intrusion Prevention Systemの略。
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※14
EDR:端末やサーバー上のプロセス、ファイル、通信などを継続的に監視し、不審な挙動の検知・調査・封じ込めを支援する仕組み。Endpoint Detection and Responseの略。
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※15
Inbound通信:外部ネットワークからサーバーや端末へ向かう通信。サーバーやポートの脆弱性を突いた侵入などさまざまな侵害に利用され得る。
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※16
Outbound通信:サーバーや端末から外部ネットワークへ向かう通信。侵害後の外部指令通信や情報持ち出しにも利用され得る。
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※17
ラテラルムーブメント:侵入したシステムを起点に、認証情報や通信経路を悪用して別の端末・サーバーへ横展開する動き。
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※18
MFA:パスワードに加え、端末、生体情報、ワンタイムコードなど複数の要素を組み合わせて本人確認する方式。Multi-Factor Authenticationの略。
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※19
Security Group:クラウド環境で、仮想サーバーなどへの通信を許可・制限するための仮想的なアクセス制御。
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※20
Network ACL:ネットワーク単位で通信の許可・拒否を制御するアクセス制御リスト。
参考情報
筆者プロフィール
鍋谷 健 なべたに たけし
ユニアデックス株式会社
セキュリティサービス本部 本部長
牧 博正 まき ひろただ
ユニアデックス株式会社
セキュリティサービス本部 セキュリティソリューション一部 部長
資格情報:CISSP、CISM、CISA
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IPA「PHPの脆弱性対策について」およびJPCERT/CC「PHPにおける複数の脆弱性に関する注意喚起」を基にユニアデックスが作成