生成AIで廃棄ハードディスクのデータ消去業務の効率化に挑戦
生成AIを「チームメイト」に加えてPythonプログラムを開発
社内の業務改善活動からデータ消去業務の課題に挑む
まずはお二人の普段の業務について教えてください。
ユニアデックス 村越 亮(以下、村越):私は金融機関に常駐するフィールドサービスエンジニアとして、ネットワーク機器やサーバーなどの保守を担当しています。お客さまとの距離が近いため、日々の業務運用に関する相談も多く受け、幅広い領域で対応しています。
ユニアデックス 吉田 雪子(以下、吉田):私もフィールドサービスエンジニアですが、データセンターに常駐しているため、村越とは異なりお客さまと直接関わる機会はほとんどありません。BIPROGYグループのお客さまのIT機器の導入・保守を担当しています。
そうした中で抱えていた、データ消去業務に関する課題とはどのようなものですか。

ユニアデックス株式会社
サポートサービス第一本部 サービス二部 二課
村越 亮
村越:お客さまが利用していたサーバーなどがEOL(ライフサイクル終了)を迎えてそれらを廃棄する際には、ハードディスク内の機密データを適切に消去する必要があり、当社はこうした作業をお客さまにサービスとして提供しています。具体的な作業として、まず、サーバーから取り出したハードディスクのデータを専用マシンで消去します。次に、消去証明書に添付するハードディスクの写真を撮影します。さらに、ハードディスクの表面に記されたモデル名やシリアルナンバーを確認し、管理表に転記します。最後に、これらの情報を、消去証明書を発行する部門へ渡します。 この業務で最も課題となるのが、人間の目視に依存した入力作業です。数字の「8(ハチ)」とアルファベットの「B(ビー)」、「0(ゼロ)」と「O(オー)」などの判別しづらい文字があり、ミスの原因となります。また、手入力では打ち間違いが発生することもあります。 いったん目視でシリアルナンバーを確認して管理表に手入力し、その後のチェック工程で再確認をしますが、そのチェック時に入力ミスが見つかり、差し戻されることもありました。こうした手戻りによって、作業が長引いてしまうケースも少なくありません。
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参考

ユニアデックス株式会社
サポートサービス第一本部 サービス二部 一課
吉田 雪子
吉田:データセンター内でも同様のデータ消去作業を行いますが、ハードディスクのメーカーによってシリアルナンバーの記載場所が異なる点も、現場の混乱を招いています。中にはシリアルナンバーのように見える番号が2つ記載されている場合もあり、どちらを記録すべきか判断に迷うことがあります。こうした確認作業は本当に手間がかかります。
そうした課題の解決のために、生成AI活用に取り組んだのですね。
村越:データ消去業務をもっと効率化できないものかと考えていたときに目に留まったのが、ちょうど社内で始まった生成AIを活用した業務改善活動でした。取り組みのテーマとして「システム運用」「セキュリティ」「資産管理」に加え「生成AI活用」もあったため、会社の後押しが得られるこの環境を生かし、生成AIによる業務効率化にチャレンジすることにしました。
生成AIをチームメイトに加えてPythonコードの書き方を学んだ
活動はどのようなプロセスで進んだのでしょうか。
村越:私と吉田を含む4人のメンバーで2024年度から活動を開始し、プログラミング言語のPython(パイソン)を利用してデータ消去業務を自動化するプログラムの開発に取り組みました。しかし、メンバー全員がプログラミング初心者でしたので、全社的に提供されている「BIPROGYチャット」という社内の生成AIサービスを“チームの一員”として加えることにしました。
この生成AIを相手に「壁打ち」を繰り返しながら、Pythonでのコードの書き方や修正方法を学びました。最終的には、生成AIの支援を受けながら目的のコードを作成できるようになりました。
開発したプログラムは、スマートフォンなどで撮影したハードディスクの画像からモデル名やシリアルナンバーを抽出し、管理表に自動転記する機能を持っています。
吉田:2年目に当たる2025年度の活動では私がリーダーを引き継ぎ、プログラムの機能拡張を続けています。具体的には、読み込む画像の品質向上に加え、バーコードの読み取り機能やOCRによる文字認識機能を追加し、認識精度を高めました。
また、データ消去業務だけでなく、EOL調査の効率化として、各メーカーの製品サイトから保証期限情報を自動取得するプログラムも開発しました。
データ消去サービス対応フローの改善
2年間の活動を経てデータ消去に費やす実作業時間を30%以上削減
開発したプログラムは、データ消去業務にどんな効果をもたらしていますか。
村越:1年目の活動では、データ消去業務全体の作業時間を約26%削減できました。文字の読み取り精度も当初は60%程度でしたが、改良を重ねて着実に向上しました。
この成果は会社からも高く評価されました。それを通じてさまざまな部署から注目を集め、メンバーの次年度に向けたモチベーションも大きく高まりました。
吉田:2年目の活動では、さらに5%の時間削減を実現し、前年度と合わせて30%以上の時間削減を達成しました。モデル名やシリアルナンバーの読み取り精度も約80%で安定するようになりました。
また、EOL調査の効率化についても大きな成果が出ており、保証期限情報の取得時間を約50%削減できています。
今回の生成AI活用の経験は、お二人の業務や働き方にどんな変化をもたらしましたか。
村越:私にとっての最大の変化は、生成AIが身近な存在になったことです。業務改善活動だけではなく、日常業務でも生成AIを相手に壁打ちするようになりました。“気軽に相談できる相棒”として生成AIが加わったことは、大きなプラスになっています。
また、会社がこのような業務改善活動を支援し、トライアンドエラーを含めた取り組みそのものを評価してくれたことに感謝しています。
吉田:この2年間で生成AIの目覚ましい進化を体感しました。プライベートでも、スマートフォンのカメラの機能で外国語の文章や看板などを翻訳したり、撮影した物品の製品名を判別したりと、多くの場面で驚きを感じています。
プログラミング初心者ばかりのチームでも、生成AIの力を借りてこれだけの成果を出せた経験は、入社3年目の私にとって大きな自信になりました。生成AIをうまく活用すれば、さまざまなアイデアを形にできることを実感しています。
現在も活動は継続中で、データ消去業務のさらなる効率化と精度向上に取り組んでいます。また、EOL調査についても対応範囲を広げ、いずれはユニアデックスが扱うすべての機器に対応できるシステムに発展させたいと考えています。
「習うより、慣れよ」が生成AI活用のポイント
生成AIのご活用をお考えのお客さまに、お二人の経験から、何か役立つヒントや考え方がありましたらお聞かせいただけますでしょうか。
村越:まずは、身近な疑問や興味のあることを生成AIに質問してみることから始めるとよいと思います。「習うより、慣れよ」の精神で、少しずつ試しながら使い方を覚えていくのがコツです。体系的な学習も大切ですが、日常業務の中で積極的に触れることが重要です。最近ではスマートフォンにもAI機能が搭載されており、手軽に始められます。
ただし、セキュリティには十分注意してください。業務での生成AIの利用は組織のセキュリティ規定に沿う必要があります。特に、無料で公開されている生成AIサービスでは、送信したデータが学習に利用され、第三者に活用されるリスクがあるため、機密情報を入力することは控えるのが安心です。
吉田:私からは「生成AIを信じ過ぎない」という点を強調したいです。生成AIの回答はすべて正確とは限りません。間違った情報を生成する「ハルシネーション」が起こる場合もあるため、うのみにするのではなく、自身でも内容を確認するクセをつける必要があります。最終的な判断は人間が行うという前提で利用することで、生成AIの効果を最大化することができます。